御曹司の溺愛エスコート
桜に逃げられた蒼真はもう一度アパートへ向かった。


「桜! 桜?」


ドアを叩いていると、先ほどのリサと言う老婆が顔を覗かせる。


「あんたは、さっきの……サクラは戻ってないよ」


そう言うと顔を引っ込めて、ドアが閉まった。


しばらく部屋の前で待っていたが、出直す事に決めてアパートを後にした。



ホテルに戻った蒼真は真琴に電話をかけた。


『蒼真様。桜様に会えましたか?』

「会えた事は会えたが……逃げられた」

『手ごわい相手ですね。桜様は』


蒼真様から2度も逃げている桜様はある意味すごいと、真琴は笑いをかみ殺す。


「笑い事ではないんだ。桜はひどいアパートに住んでいる」

『失礼しました。ひどいアパートとは?』

「治安が悪いと言われている地区に住み、凍えるほど寒いというのにヒーターも壊れていた」

『桜様は苦労なさっておいでだったのですね』

「あぁ。もう少し時間がかかりそうだ。後をよろしく頼むよ」

『かしこまりました』


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