幸せの明日
「俺の好きだった人…今はもうこの世には居ないけどな…」

「え…」
アタシは後になって後悔した。
涼介は過去の事をゆっくり、静かに語ってくれた。




「だから沙梨亜は今でも俺の心ん中に居るって信じてんだ…」
涼介は最後までアタシに話しを聞かせてくれた。

ねぇ…どうしてアナタはそんな風に笑っていられるの?
どうしてアナタはアタシなんかに優しくするの?

「グス…」
気が付けばアタシは泣いていた。
「…ごめんっ!なんか、しんみりした話しちまったよな…」

アタシ自身、どうして泣いているのか分からない。
だけど、同情して泣いているわけではない。
それだけは確かだった。

「違う…ただ、辛いのは自分だけじゃないんだって分かったの…。涼介みたいにもっと辛い過去を持った人が居るんだって思うと、自分の弱さに凄く…腹がたった…」

アタシの涙は止まるどころか、どんどん溢れていった。
この世の中には、アタシみたいに…
レイプされた人も居る。
彼氏に利用された人も居る。
友達を失った人も居る。
援交してた人もいっぱい居る。

皆、辛い過去や、辛い人生を歩んでいる人が沢山居るんだ…。
涼介の過去を聞いて改めて実感した。

「だけどアタシは…涼介みたいに笑えない…人に心を開く事が出来ない…ホントはもっと普通の人生を歩んでいたかった…周りの人、皆がアタシを批判している様で怖いんだ…」

アタシは両手で顔を覆い声を押し殺して泣いた。
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