幸せの明日
「恵?顔上げてみ?」
涼介にそう言われたけどアタシは泣き顔を見られたくなくて首を横に振った。

その時…
―ギュッ―
アタシは涼介に抱き寄せられた。
アタシを抱き締める涼介の手に力が入る。
「これで俺や他の奴に泣いてるとこ見えないから…」
アタシはただ涼介の胸に顔を埋めていた。
嬉しさの反面なんだか凄く切なくて、久しぶりに人の暖かさを感じた。

「そのままでいいから聞いてな?恵にも辛い過去があって、俺には恵の苦しさは分からない。けど…力にはなれると思う。」

アタシはただ泣く事しか出来なかった。
「俺が恵の力になるよ。」

「ぁりがとぉ…」
アタシの口から素直に出た言葉だった。



どうしてこの人にはこんなにも心を開けるんだろう…。
暖かくて、素直になれる…。
お願いだから、アタシの心臓…このドキドキを止めて…。
もう、恋はしないって決めたのに…。
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