幸せの明日
アタシ達は近くの公園に移動した。
ベンチに二人で寄り添って座る。

「なんで恵は一人で夜の街なんかにいたわけ?」
祐樹がアタシに問いかけた。
「ちょっとした息抜き…」
アタシはうつむいて小さく答えた。
「…恵?」
アタシの異変に気付いた祐樹がアタシの顔を覗き込む。

「アタシね…援交してるんだ。援交してるのに理由なんてない。ただ…お金が欲しいだけ。汚れていくだけなのに…何回も妊娠した。中絶もいっぱいした。」

アタシの目からは涙が流れた。
押さえきれなかった今までの思いが溢れた。
祐樹は黙ってアタシの話しを聞いていた。

「学校に行っても一人ぼっちで、皆アタシのそばから離れていった。学校なんかに行かなければいいって思った。道を外して、馬鹿な事ばっかりして…もぉ死にたくて、苦しくて…生きてる意味さえわかんなくなってた……」


―ギュッ―
!!
その時…アタシはふいに抱き締められた。
祐樹の胸に埋まった顔を上げて祐樹を見上げた。
「ゆぅ…き…?」
祐樹は黙ったまま抱き締める力を強めた。
「恵ッ…」
祐樹はアタシの目を真っ直ぐ見つめた。
「恵は頑張ったよ…。汚れてなんかねぇし、俺、援交とか聞いても全然引かねぇよ?だって恵は恵だろ?自信持てよ…。恵は…綺麗だ。」

―ドクン―
『恵は恵だ。』
アタシの心臓が大きく脈打った。
自分以外…信じちゃダメなのに…
どうしても気持ちを押さえきれない。
「祐樹…」
「恵…」
アタシ達の唇は重なった。深く、深く…もっとこの人を知りたい。そう思った。
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