もうひとりの…
「あの日、夫は仕事をクビになってね。昼間から飲んで、ストレス発散に娘に手を出した。すぐ離婚よ」

彼女はその一件で人を信じられず、孤独をさ迷い始めた。

人を信じられないはずなのに、心の隅では、誰かに救ってほしがっていた。

でも、誰にすがればいいの?

解らなくなってしまった彼女は、ひとりになると、どうしてもあの辛い過去を思い出してしまう…

話し相手がいれば、紛らわすことができるのかな…?

そう考えた彼女は、がむしゃらに明るく元気に振る舞うようになる。それが、高校の頃の彼女だった。

「私がね、モデル事務所に応募したの。少しでも気が紛れればと思って」

母親の勧めで、彼女は自分を磨ける場所を見つけた。大事な何かを掴みかけた瞬間だった。

< 28 / 40 >

この作品をシェア

pagetop