黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ







―――…一瞬のことだった。


月夜が新太の手を掴んだかと思うと、自分の一回りデカい新太を床に叩きつけ、今度は新太の胸ぐらを月夜が掴んだ。






「ぐっ……」


「別にお前が俺を認めないから怒ってるわけじゃねえ。
認めねえ奴がいることぐらい予想ついてたしな?」


「っな……っ」


「だけど。
―――人に馬鹿にされること、見た目で判断されることほど、……嫌なことはねえんだよ」







月夜の胸ぐらを掴む手に、徐々に力が入ってくるのがわかる。


苦しげに歪む新太の顔は、かなりの力が加えられていることが窺えた。


航太がとりあえず月夜を新太から引き剥がそうとするが、全く意味がなくて。

更に強まるばかりだった。





「――――なぁ、お前。
言ったよな?
俺が喧嘩出来るのか?
…って」


「……っ、ぁ」


「……試して、みるか?」





新太がもがく中、月夜がとんでもねえことを口にした。

その話の流れからして、試してみる、っていう意味は………、





「っは…、あ?」


「だから、俺とお前どっちが強いか。
試してみるか、って言ってんだよ。
まあ、要するに。
――喧嘩してみるかってことだな」






――そういうことで。

何を、言ってる。
月夜から喧嘩を売るなんて……珍しい。

月夜はいつも、売られたら買ってただけであって、自ら売ることはなかった。






「外野は黙っててくれる?
……で、どうなんだ?」


「っ、望むところだ………っ!!」


「ふっ、そうこなくっちゃ。
じゃあ、……表でやろうか」


「2人ともっ!!」








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