黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
初めてその冷たい眼差しが俺らに向けられた。
鋭く光るその目は容赦ない。
一瞬だが、この部屋の空気が凍りついた。
少し怯えながらも、喧嘩を今にも始めようとする2人を航太が止めようとしている。
本来、総長である俺が止めに入るべきだろう。
こんな風に黙っているべきではない。
だがそれよりも。
…麗桜組の若頭、つまり、直に裏の世界のトップに立つべき存在である月夜の静かなる怒りが、今目の前にあるということたげが頭に残っていた。
月夜自身、本気で心から怒っているわけではないだろうから、ただ軽くキレてるだけだと思う。
それなのに、この迫力。
これが、全国No.1麗桜組若頭……。
勢いよくこの部屋を飛び出した2人を余所に、俺は考え込んでいた。
そんな俺を、憐慈や來希が咎めた。
「暁!
おめぇ、総長だろ?!
なんで止めないんだ!」
「このまま喧嘩させる気か?!」
「……っ、あ、わりぃ。
下に降りるぞ」
そうだ、何やってたんだ、俺は。
慌てて外に出たが、既に遅く…。
2人は喧嘩を始めていた。