ハルアトスの姫君―君の始まり―
城と二人の魔法使い
【キースside】


天井の白さが視界に飛び込んでくる。
そのあまりの白さに目が眩む。病的なほどに白い。何も寄せ付けない、固い白さだ。


「ん…。」


ゆっくりと身体を起こし、辺りを見回した。
…ああ、そうだ。もうここは村じゃない。
―――ジアはもういない。


その事実を反芻し、痛みを感じる自分を恥じた。
俺はそんなことを思っていい立場にはいない。
痛がるくらいならば離れなければ良かったんだ。
…そんなこと、思う自分を許さないし許してはならない。


「自分で別れたんだ。…何を今更。」


誰もいない部屋のベッドの上でそう呟いた時だった。


「お目覚めですか、キース・シャンドルド。」


穏やかでいてどこか冷たい声が耳に届く。


「…シャリアス…。」

「ジョアンナ様がお呼びです。ぜひとも顔を合わせたい、と。」

「分かった。」


…さぁ、さよならだ。
記憶も、自我もきっとなくなる。
それでも…時折〝自分〟に戻る。
その時までに調べなくてはならない。


この城の秘密を。

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