ハルアトスの姫君―君の始まり―
小屋を出たミアに続いてクロハも外に出る。
空高く光る満月が今日はやけに眩しい。
「ミア、力の使いすぎで体調でも悪くなったのか?」
「いいえ。問題ないわ。」
それ以上二人に言葉は無かった。
ミアは満月を見つめている。
沈黙を破ったのはクロハだった。
「ミア。」
「なに…かしら?」
「ジアは何だって?」
「…自分が看てるから、安心して休んでって。」
「それだけ…か?」
「ええ。だから…休みましょう、クロハ。」
一度空気を吸い直して、傷だらけの青年と金の猫が佇む小屋に戻る。
その対極に腰を下ろし、隣をどうぞと言わんばかりの仕草をしてクロハを呼び寄せる。
それに抗う術を知らないクロハはミアと少し距離を取った位置に腰を下ろす。
「おやすみなさい。」
「…ああ。」
一度、にこりと微笑んで、ミアはゆっくりと目を閉じた。
その微笑みにクロハが頬を染めたことに、ミアは決して気付かない。
夜の闇は人の表情を隠す。
クロハのそれもまた、夜の闇に隠された。
月の光がただ、ミアの銀の髪を時折照らした。
眠れないクロハの左肩に、ミアがもたれたのはほんの十数分後のことだった。
空高く光る満月が今日はやけに眩しい。
「ミア、力の使いすぎで体調でも悪くなったのか?」
「いいえ。問題ないわ。」
それ以上二人に言葉は無かった。
ミアは満月を見つめている。
沈黙を破ったのはクロハだった。
「ミア。」
「なに…かしら?」
「ジアは何だって?」
「…自分が看てるから、安心して休んでって。」
「それだけ…か?」
「ええ。だから…休みましょう、クロハ。」
一度空気を吸い直して、傷だらけの青年と金の猫が佇む小屋に戻る。
その対極に腰を下ろし、隣をどうぞと言わんばかりの仕草をしてクロハを呼び寄せる。
それに抗う術を知らないクロハはミアと少し距離を取った位置に腰を下ろす。
「おやすみなさい。」
「…ああ。」
一度、にこりと微笑んで、ミアはゆっくりと目を閉じた。
その微笑みにクロハが頬を染めたことに、ミアは決して気付かない。
夜の闇は人の表情を隠す。
クロハのそれもまた、夜の闇に隠された。
月の光がただ、ミアの銀の髪を時折照らした。
眠れないクロハの左肩に、ミアがもたれたのはほんの十数分後のことだった。