ハルアトスの姫君―君の始まり―

 空白を埋めるように

【シュリside】


ジアの目覚めを待ち続けて今日で一週間だ。
目を覚まさないのは力を使いすぎたのか、それとも封印されし魔力の暴走なのかは分からない。


ミアの手厚い治癒魔法で傷はすぐに癒えた。だが、私とシャリアスはキースとジアの落ちた穴への魔力放出の結果、大部分の魔力を失い、その回復に2日を要した。傷はなくなってもその2日間はろくに動けなかった。


王宮が私達魔法使い、つまりは人間ではない存在を城に置いておくのは他でもない。王家の大切な姫君の呪いを解いた経緯を把握し、ジョアンナについての情報を整理するためだ。
そのため私達はそれなりに監視された状況下で生きていた。


王家の客室の一つに通された私とシャリアスは、穏やかすぎる日々を過ごしている。
それこそ、時が進んでいるのかすら疑わしいほどに穏やかな日々を。





「…どうしようか、この後。」

「どうもこうもないだろう。しばらくは出られない。」

「それは分かっているよ。その後の話さ。」

「…王家は魔法使いの存在を認知するが、人間とは交わらない世界を望むだろうな。魔法使いであるジョアンナがこの一件を引き起こしたのだ。魔法使いに対するイメージはこの上なく悪いだろう。
私達はもう二度と争いに巻き込まれたりはしない。だがそれと同様に人間にも関わらない。…キースの立場はますます〝あってはならないもの〟になるであろうし、そうなると…ジアとの未来が心配だな。」

「…そこまで考えていたんだ。でもシュリ。」

「なんだ?」

「自分のことは何一つ考えてないんだね。」


そう指摘されて気付く。確かに私は人の心配ばかりしている。
…こんなのはらしくない。長い間、〝独り〟でいたはずなのに。

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