ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


いつもとは違う、穏やかとは言えない朝がやって来た。


「ジア!」

「うわっ…シュリ?どうしたの?」

「…またレスソルジャーが来た。」

「え?」

「その顔…少しはマシになったじゃないか。」

「え…?」

「分かったか?お前に絶対的に足りないもの。」

「わっ…分かんないよ!答えはまだ…。」

「ならば…レスソルジャー討伐にはキースを向かわせる。それでいいか?」

「だっ…だめっ!」


それは反射のように出た言葉だった。


「お前には倒せない。クロハにもミアにも無理だ。ならば…キースが行くしかあるまい。」

「行ってきます。」


そう言って背を向け、部屋を出ようとしたキースの腕をジアは強く掴んだ。


「だめ。あたしが行く。」

「ジア!」

「言ったな。…お前がもし全てのレスソルジャーを倒し、無事生還したら教えよう、氷の涙について。女に二言はあってはならない。…行け。」


ジアは一度だけルビーに触れた。そしてシュリに向かって小さく頷いた。それを見たシュリも満足そうに笑みを浮かべている。

もうキースに迷惑はかけない。それだけを心に誓い、家を出た。
バタン、と無機質な音だけが部屋に響き渡る。


「…勝算あんのか?死なねーんだろうな。」


そうシュリに言ったのはクロハだった。


「ジア本来の実力を発揮出来れば問題ないだろう。」

「シュリ様…なぜ…。」

「追い掛けようとしても無駄だ。部屋からは出れないように魔法を施してある。」

「あなたは自力で追い払えるはずでしょう?」


珍しくキースが声を荒げた。
その姿にシュリは怪しく笑う。

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