ハルアトスの姫君―君の始まり―
遠い待人
「シュリ…?」

「……。」


シュリは顔を上げなかった。
そのままくるりとジアに背を向ける。


「すまない。話はあとだ。」

「シュリ!?」

「ジア。」


不意にキースに後ろから腕を掴まれた。
傷のところが引きつって、それに伴って顔も引きつる。


「ジアは治療が先。」

「そういうこと。ほら、怪我したとこ出しやがれ。」

「あたしの怪我は大丈夫!それよりもシュリが…。」

「今は誰が何を言っても無駄だと思うよ。」

「…おれもキースに同意だな。」

「なんで!?」

「あの背中は…『一人にしてくれ』っつってただろーが。
何にも知らねぇおれらが介入して何になる?」

「もうちょっと言い方、優しくできないの?」

「悪いがお前と違って回りくどく言うのが嫌いなんだよ。」

「…素直なところはいいんだけどなぁ…。
とにかく、ジアのせいとかそういうわけじゃないから。
まずはジアの怪我を何とかしよう。
シャワー浴びておいで。その血を洗い流して、傷口もしっかり洗っておいで。」


諭すような、なだめるようなキースの口調にジアは何も言えなくなった。
クロハはばつが悪そうに顔を歪めている。


「ちゃんと洗えよ、ジア。治療はその後だ。」

「…うん。」


ジアは渋々頷いた。

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