2222―SF(すっとぼけフィクション)―
◇◇◇◇◇


ユキの体が、
突然の言葉のせいか、

一瞬、
硬直したのがわかった。


急激に訪れた最後の通信の瞬間に、

本当はもっと、

感謝の言葉をいうべきだったんだろうけど、

全然、
浮かんでこなかった。


たくさんありすぎて、

こんな時間じゃ無理だ。


精一杯の大きな声で、叫ぶ。


「聞いてくれ!わかった、オレが行く!文句はないだろ?オレたちが差し出さなきゃいけない命の責任は一つで十分のはずだ!」


「ああ、それでもいい。話が早くて助かるよ」


そこのところを、

オレはユキに伝えなかった。

オレの役目は、
もう終わったから。

ここから先は、
山下さんがユキを守ってくれるはず。


ずっと背中にしがみついているユキ。

そんなユキに、
オレは降りるように促す。

すると、
突然ユキはオレの体に字を書いてきた。



[ばかいわないでよ!なにいってんの!やめてよ!]



その言葉、
嬉しかった。

けど、
きっとこうするのがいちばんいい。


言葉を返す。


[ユキが、本気で、一緒にいたいってひとをみつけたんなら]


[だ、だけどだけど!]


[だったら、もう死ぬことはないだろ]



そのとき、
誰かが近づいてきて、

オレの腕をつかんだ。


「ご協力、感謝します。いいですね?」
「はい」


それから、
オレの背中から、

今まで、
本当に自分の一部みたいにあった、


あたたかさが、
はがされていった。


そして、
見知らぬ手に、

どこかに連れて行かれる。



「ユキを、よろしく頼みます!」



オレはめいっぱいに叫んでいた。


山下さんに。


ユキの選んだ人だ。


きっと、
まちがいなく幸せにしてくれるに違いない。





さよなら、ユキ。




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