2222―SF(すっとぼけフィクション)―
◇◇◇◇◇

また車に乗せられた。エンジンのかかる音が聞こえてくる。さっきとは違う車だ。乗るときにイスの位置が高いなって思ったから、ワゴンみたいな車なのかもしれない。


「なにか、弱点は知らないの?あいつらの」


車が動き出して少ししてから、スミレが話しかけてきた。


「知らないよ。というか、知ってたらもうどっかに言ってるよ。人としてっていうか、さすがに他の誰かが死ぬのを防げるんだったら」

「そう……当てが外れたわね」

「当てにしてたってのか?」

「元教団の人間だからね、あんたもユキさんも。何か知ってる可能性もあるって思ってた。名前も変ってるし、何らかの理由で、正体を隠してて、それで国家とのコンタクトを避けてるんじゃないかって考えてたのよ。そう考えると、接触にもリスクを伴うから、今まで何もアクションを起こさなかったんだけど。今までっていっても、あんたたちの素性がわかったのも、つい最近だけどね。なかなか裏とれなくて」


「リスクってなんだよ。特に何もないぞ?オレたちには。ただ、安全な場所を探してこの国にきただけだ。教団の影響が少ないと思って」


「そうだったの。存在がバレた瞬間にこの国から逃げ出すかもしれないって、あたしたちはそんなふうに思ってた。そうなったら、人間離れした強さの元教団員をとめることはきっと難しい。あなたたち、上のほうではけっこうキーパーソンとして見られてたのよ。もしかしたら教団に対しての有効なカードになるかもしれない、あなたたちを絶対にこの国から出しちゃいけないって」


買いかぶりすぎだと思う。確かに肉体は強化されてるけど、国と張り合えるほどじゃないし、教団に対して何か言えるほどの力も持っていない。こんなことになった補償くらいはしてほしいもんだけど。


「ご期待にそえませんで」

「ホントよ……最後の望みだったんだけどな。あたしにとっても、この国にとっても。あーあ、ホントにもうだめなのか」


スミレの声を聞きながら、ユキのことを考えた。今、幸せな気持ちでいるんだろうかって。親友の望むほどには、ユキは幸せになれないかもしれないけど、せめてその時が来るまでは、短くても目いっぱいの幸せを感じてほしいなって、思う。


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