ちゆまど―世界は全て君のために―
イナディアルが手を伸ばせば、ぎこちない動きながらもユリウスがその手を取った。
止めようとしたシブリールだが。
「お兄ちゃん……!お兄ちゃんだ!」
そう子供みたくはしゃいだ彼女を見たらためらった。
脳が混濁したせいか幼児かしているよう。
血だらけでも兄と認め、ユリウスはイナディアルの首に腕を回して寄り添った。
「ユリウス、僕……君を食べれそうにない……」
人間を食べきるには時間がいる。もう自分の余命はそこまでもないと分かっていたイナディアルはそう呟いた。
「だから、僕を食べて」
切り離された右腕を差し出した。ぽけえとそれを眺めるユリウスに、兄は微笑む。
「父さんと母さんも一緒なんだ。ユリウス、一つになろうよ。一つになって。それは僕の願いだから」