ちゆまど―世界は全て君のために―


「ユリウスは僕の家族だから……」


「家族云々で図るな。お前がお前だからユリウスは愛情を注げる。だが、食ってしまえば、注がれる愛情もなくなるぞ」


「――」


『抱きしめることも、笑顔を見ることできない』


思い出されたユリウスの言葉。


別に構わないと思った。でも、今。


「ああ――」


彼女の笑顔がなんて愛しいことか。


抱き締めて、泣いた。


自分が死ぬ時になって感じる。もうこの笑顔を見ることもなければ、抱きしめることもできないと。


それは紛れもなく、自分が殺した父と母の気持ちではないだろうか。


一つになりたかった、けどそれは。


「とんだ、わがままだった……」


生きているからこその幸せだ。死ねば喜びも感じない。父さん母さんもきっと望んでいたなんて、それはただのエゴ。


望もうが叶えた先に喜びを感じるモノはもうなくなっているのだから。


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