zinma Ⅰ
ーーーだから今日シューが来ないことは、僕は知っていた。
それに僕は、やっぱり少しだけ、最後にもう一度シューに会いたかったかな、なんて考える。
それを振り切るように首を振ってから、カリアとファギヌを見上げて言う。
「もう行けます。」
それにふたりはうなずくと、村の人たちにひとつ礼をして、歩き始める。
それに着いて行こうとして、僕は一度だけ振り返る。
見慣れた村の家。
広がる畑と森。
村の人たちの顔。
こちらを見つめるアルマさんの顔。
それから、ここに自分の感情を捨てる。
次に僕が、人間らしい感情を手に入れるのは、この村にまた帰って来る日にすることを決める。
それは、僕の中でうごめく、『選ばれしヒト』の心への侵入を意味する。
それに僕は………
そこで僕はもう踵を返し、二度と振り返らない。
さっきまでの僕なら、ここで泣きだしそうになるだろうけど。
いまはさっきより『選ばれしヒト』の意識が強まったから、何も思わない。
これから先のことばかり考える。
自分が変わってしまったのを怖くも思うけど。
でも………
と、そこで僕は首にかけた石を握る。
これを持っているかぎり、イルトであったことを忘れないでいられる。
いつか、イルトに戻れるかもしれないから。
そのときまで、忘れないように。