zinma Ⅰ
「僕は………
今さら人間には戻れないから。」
「…どういうことだ?」
それに僕は、僕の人間の気持ちを少しずつ紐ときながら、話す。
「あのまま、あの村で人生を終えるのも、幸せだと思います。
でも、それは僕にはできません。」
カリアは、僕の言葉を静かに聞いている。
「……僕がこの世に存在することで、この世は大きく変わります。
その証拠に、あのとき、カリアにあの話を聞いたとき、森が変わったから。
これからに備えるように、目の前に現れた『選ばれしヒト』に怯えるように、森が落ち着きを失った。
きっと、そういう変化は、僕が生きているかぎり、起きつづける。
僕がいるだけで、僕が選ぶだけで、世界は簡単に姿を変える。
今までだれかが平和に生きてきた世界が。
古くから姿を変えなかった大地が。
僕はそれを、黙っては見ていられないから。」
そこで僕は言葉を止める。
もう迷いなく、カリアを見つめる。
「………それなら僕は、犠牲になります。
僕の命はもともと怨まれる命。
この命くらい、捧げます。」
それにカリアは、苦しげに顔を歪める。
そしてうつむくと、
「…………そうか。」
と小さくうなずいた。
すると。
森の奥、村のほうから、何か変な感じがする。
それに僕もカリアもファギヌもそちらを見る。
そこで、
突然突風がふいた。
目が開けられなくなるほどの突風が、僕たちを通り抜けていく。
それは、ほんの一瞬。
一瞬のことだったが、『選ばれしヒト』の僕には、見える。
きらきら光る、霧。
さっきカリアが、魔力だ、と言った輝きが、一気に押し寄せてきたのだ。
攻撃するわけでもなく、ただの突風。
それにカリアとファギヌも驚いた顔をしている。
しかし、この風がなんなのか、僕にはわかった。
シューだ。