zinma Ⅰ
シューだ。
僕は思った。
この風はシューだ。
証拠はなくても、僕には確信があった。
シューが、僕に送ってくれた風。
シューの香りがする、風。
それに僕は、
「………カリア。」
と、森の奥を見つめたまま、呼ぶ。
それに、まだ驚きを隠せない様子のカリアが、こちらを向く。
驚くのも無理はない。
この村の人間が魔術を使えるはずがないから。
なのに魔力のこもった風が通ったから。
僕は向き直り、そのカリアを見つめ、言った。
「風の魔術をつかってください。」
それにカリアが、ぴくりと眉を動かし、
「なに?」
と言う。
「風の魔術を僕に教えてください。」
それにカリアは、もう言葉もないように、怪訝な顔をする。
ファギヌも、僕のことを驚いたように見ている。
それにまた僕は言う。
「早くっ。風の魔術を描くだけでいいですから!」
それにカリアは一度僕の瞳を見つめ、目を閉じる。
手を動かし、空間にきらきら光る模様を描いていく。
それを僕は、『選ばれしヒト』の目で見る。
腕を、動かす。
光を、描く。
「なっ………」
と、ファギヌが驚くのが視界の端に写るが、気にしない。
カリアも、眉をひそめ、僕を恐れるような顔をする。
魔術が、完成した。
風が、模様の中心に集まってくるのが、僕には見える。
その風を見て、最後に指示を出す。
シューへ。
シューのもとへ。
行け。
とたんに、さっきの風よりも、少しだけ弱い風が森の奥へと放たれる。
シュー。
ありがとう。
ごめんね。
僕は、首にかけたシューの石を、握りしめた。