【完】風に恋をする。
「まっ、元気になったらいつでも来い! 俺も皆も待ってるからさ!」
「…」
「んじゃ、今日はこの辺で」
先輩が立ち上がった時だった。
病室のドアが勢いよく開く。
「ちーっす!! 元気にしてたかぁ!!」
開けた主は、短い髪に、少し顎にひげがある40後半のおじさん。
黒いスーツで、ネクタイはつけていない。
だ、誰…っ?!
「立川さんっ?!」
…先輩の、知り合い…?
「よっす! 遅くなってすまん!」
「大会まであと一ヶ月もないんですけど…」
「がっはは!! 安心しろ、ちゃんと指導してやるって!」
あたしは口を開けてポカーンとしていると、立川さんと呼ばれる人と目が合った。
「誰だ、この子。めっちゃ可愛いけど。お前の彼女か?」
「違うっす…」
「ふぅーん」
ジーッと見た後、ニッと笑った。