【完】風に恋をする。
「ね、ねぇ…啓くん…」
「ほっとけ、あんな奴」
「でも…」
「…わかった」
俺はギュッと抱きしめて、そっと離れた。
渋々、病室のドアを開けて啓を呼ぶ。
「待ちくたびれたんだけど」
「早く入れ」
本当は…こいつと風花を会わせるのはあんまり気が進まない。
だって、コイツ…。
俺は、風花と啓が初めて会ったときの事を思い出す。
風花の頬に、啓の唇が触れたこと。
「よっ、久しぶり」
「久しぶり! ごめんね、急に…」
「いやいや、風花ちゃんの頼みなら喜んで」
わざわざ”風花ちゃんの頼みなら”を強調する。
ムカつく…。
こいつ、絶対喧嘩売ってるよな。
俺がコイツを呼んだ時だって…