【完】風に恋をする。
「だ、大丈夫だよ!」
「いいから。行くぞ」
今にも泣きそうなコイツを、一人になんかできない。
俺は風花の手首を掴み、歩き出す。
健も佳織も、ポカーンと放心状態。
それは、風花も同じ。
病院の前まできて、俺は一回手首を離した。
そして、そっと、風花を抱きしめた。
小さな体。細い肩、腕。
今にも、壊れてしまいそうだ──…。
「怖かったろ」
「ぇ…」
「怖かったんだろ。初めて外にでて、知らない野郎に話しかけられて」
「…」
「ごめん、ごめんな」
安心できるように、そっと背中を撫でながら言った。