【完】風に恋をする。
バッと振り返れば、真剣な顔をした部長。
「風馬、お前はどっちがやりたいんだ」
「…」
「やりたい方をやれ」
「…400の代わりは」
「あぁ?? んなもん、いねーに決まってんだろ」
「だから、俺が」
「お前、いつからそんな偉くなったんだ、えぇ?」
「…ッ」
「風馬、ガキが偉そうにしてんじゃねーぞ。確かに、お前が走れば400リレーは相当な結果が出ると思う。それで優勝するかもな。でもな、”やりたくなかった奴がいたチーム”が優勝して、他の奴らはどう思う」
部長は、段々と続ける。
部長の目は、
本気で陸上が好きな目だ。
「競技場に集まる奴らは、本気で陸上を好きな奴だ。本気で400リレーに出たくて、やっと出れた奴がいる。そんな奴とは真逆の野郎が優勝したら、逆に沢渡の恥だ。
もう一度聞くぞ。
風馬、お前はどっちがやりたい」