+Black Blood.
急いで覚束無い足のまま指された場所に向かう。
「っ、兄さん!!!」
窓際のサッシに、縄で縛られている黒い影。
一瞬、零かとも思ったが直ぐに兄だと分かる。
「そ、ら・・・・・・・・・・・・・」
久し振りに見た兄の顔は、疲労と痛感で生気が無かった。
「どうしたの?何で此処に縛られて、」
その質問には羽牙祢が答えず菖蒲が答えた。
「だって羽牙祢さぁ、逃げようとするんだもん。空を探すーって。だから。」
「何でこんな怪我・・・・!!」
体には、切り傷や擦り傷など無数の傷跡が。
「そのデカい男にやられた」
傷の割には普通に喋る兄に一先ずほっとする空羽は、羽牙祢の隣に膝をつき、縄を解こうと試みた。
「ってか空羽その格好・・・・・・・・」
「うん。そっか。普通に驚くよね」
女物の服を着ている空羽に目を見開いて、本物かどうかも疑う。
喋り方も、容姿も、雰囲気も収容されていた頃とは全く別人だ。
「・・・・あの男の所に世話んなってたのか?」
「・・・まぁ。しかも一応仁叉の婚約者だし」
「ハッ?!!」
ばら、と解かれた縄から手を出し、空羽の肩を掴む。
「婚約者?お前が?!」
「エッ?!婚約者?!」
羽牙祢どころか向こうに居る菖蒲も驚愕の顔をしていた。