ピンクの落書き
「でも、ちゃんと本人に聞かなきゃ!」
「いーからっ!」
つかんでいた腕を颯と琉那の反対方向へと引っ張った。
目の前が真っ暗だ。
-----“怖い”。
「翼っ!停まってよ。ちゃんと話してみなきゃわからないよ?翼ならキレるくらいの勢いはどうした?うちの彼氏に手を出すなって」
その言葉…うちが琉那に言った。
『アカネのことが好きなんだって…翔太に聞かされるのが嫌だった。怖かった。何も聞きたくなかった、何も見てない振りしたかった』
頭の中を琉那の言葉が駆け巡った。
あのときは、琉那の怖いという感情が謎だと思ったが、今ならわかる。
颯の口から出る言葉が怖い。
聞きたくない言葉たちが出てきそうで…
「翼?翼!?聞いてんの?」
ありすが顔の前で手を振っている。
正気が戻り我に返る。
「もう…帰る」
「あ、うん。わかった」
颯と琉那から離れたい。
ただ黙って行先もわからず歩いた。
もう…わからないよ?
何も考えられないよ。
考えたくもない。
足がふらつき、エレベーターの前でしゃがみこんでしまった。
「翼、大丈夫?」
大丈夫なわけがない。
涙がぼろぼろ零れ、床を濡らす。
声も出ず…静かに泣いた。