ピンクの落書き
「今日は、ノリ悪いな」
不機嫌そうな顔の拓海が隣。
「ごめんね。またね」
それだけ言って、うちは拓海の隣から離れる。
屋上を後にした。
「はぁ~…」
授業中の静かな廊下。
うちは…何をやっているんだろう?
彼氏を毎日避ける。
親友を毎日避ける。
そして、拓海に逃げる。
そんな毎日を繰り返して何になるんだろうか?
階段を静かに降りていると…。
すごいね、このタイミング。
階段の下には、うちを見上げている颯の姿。
驚きも焦りもしなかった。
颯は「あ」と言うように口を開けている。
「見つけた」
そう小さくつぶやいた颯。
うちを探していたの?
だけど、うちはその颯の隣をただ黙って通り過ぎようとした。
が、腕を後ろから掴まれた。
久しぶりに感じた颯の体温。
手の骨格。
悲しいほどにうちの体は、颯の体を覚えている。
大好き“だった”人の手。
「なんで俺を避ける?」
なんでそんな質問をぶつけるの?
自分が浮気をしたくせに。