鈴の音が響く頃

ふわりと、小さな妖精が私の前に立った

織姫が着てそうな着物の裾をなびかせ
頭のてっぺんでお団子にまとめた髪に刺さる飾りが
チリンと音をたてて揺れた

楓ちゃん…
見た目こそ幼いものの、
話し方や風格は
1000年を生きた人が纏う、オーラのようなものを感じさせる


『あのとき、友が苦しむ姿を見て、キョウコは願った。"誰か、助けて"と』


「そ、そうだっけ…?」


無我夢中すぎて、覚えていない




『そしてあのとき、
キョウコの願いを叶えられるのは私だけだった。
私が、キョウコを導けた。
そして私自身も
キョウコを必要としていた。呪いを、解き放つために』


「呪い…」


たしか、あの場所は呪われたって
楓ちゃん言ってた気がする…



『椿の暴走と、鈴姫の死により
2つの村は壊滅。何千もの命が失われた。そして
その命は、鈴姫の魂を頼り、鈴姫を求め続けた。
自分の魂を、安らかなる地へ導いてもらうために…
あの祠に近付いたときに感じた視線は、
そのもの達の魂なのだよ』

「あの、監視されてるような視線…?」


『そう。あの者達は試していたのだ。近寄る人間が
鈴姫なのか、違うのか。
相応しくない人間は…』


楓ちゃんがチラリと杏を見る


『苦しめられた挙げ句
排除される』



「排除…」


聞いて背筋がゾッとする

あのままだったら、
杏は…
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