恋がはじまるよ
 子供の頃、結衣は、洸貴のことが大好きだった。

 まるで女の子みたいな、かわいい顔は、もちろん。

 洸貴のやさしいところも、大好きだった。

 たとえば。

 結衣が大きな犬に追いかけられたときに助けてくれたり、おやつのお菓子は、絶対大きい方を結衣にくれたり。

 そんな、やさしいところが、大好きだった。
 
 大きくなったら洸貴と結婚するんだと、本気で思っていたこともある。

 だから。

 おじの家で暮らすことになって、両親や友だちと別れるのは寂しかったけれど、洸貴と会えることだけは、楽しみだった。

 東京での生活に不安はいっぱいあるけれど、やさしい洸貴が一緒なら、きっと大丈夫だと思っていた。









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