恋がはじまるよ
 頭の芯が、ぼんやりしてくる。

 足下が、ふわふわする。

 身体中から、力が抜けていく。

 背中に、冷たい嫌な汗をかいていた。

 そして。

 ドアが開いて、押し出されるようにホームに降りた結衣は、もう自分の足で身体を支えることができなくなっていた。

 目の前が真っ暗になって、崩れるようにその場にすわり込んでしまう。

 そのとき。

 後ろから誰かの腕に、ぎゅっと抱きかかえられて。

「結衣……!」

 ぼやけていく意識の中で、その『誰か』に、名前を呼ばれたような、そんな気がした。



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