恋がはじまるよ
「何してるんだよ?」

 いつの間に帰ってきていたのか、結衣の後ろに洸貴が立っていた。

「おかえりなさい。晩ごはんに、カレー作ってるの。一緒に食べよ……」

 まだ結衣の話が終わらないうちに、洸貴は冷蔵庫からコーラのペットボトルを取り出すと、何も言わずに、リビングへ行ってしまった。

「楽しみだな」とか、そんなことを言ってもらえるとは思っていなかったが、全く無反応なのは悲しい。
 
 やっぱり、洸貴は結衣のことが嫌いなのだろうか。

 でも、昨日の朝は、駅で助けてくれた筈なのに……。

 そんなことを考えながら、少しうわの空で手を動かしていると。

「痛っ……!!」

 手がすべって、左の人差し指を包丁で切ってしまった。

 指の先から、どくどくと真っ赤な血が溢れ出してくる。

 血が流れるのと同時に、ぼろぼろと涙が溢れてくる。

「バカ、見せてみろ!」

 痛いよりも、びっくりして、呆然としていると、突然、洸貴に左手を掴まれた。
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