恋がはじまるよ
「ざっくり切れてるな」

 洸貴は、流水で血を洗い流した後、結衣の指にバンソウコウを巻いてくれた。

 もう、痛みは治まっていたのだけれど。

 あんまり驚いて、涙腺が壊れてしまったのだろうか。

 涙が止まらない。

 泣き続ける結衣の顔を見て。

「まだ痛いのか?」

 洸貴が訊いた。

「違うよっ。タマネギ切ってたから、涙が止まらないだけだもん」

 泣いている自分が恥ずかしくて、結衣は首を横に振ると、また包丁を持とうとした。

 でも。

「バカ、貸せよ」

 洸貴は、結衣からそれを取り上げると、タマネギを手早く切り始めた。
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