恋がはじまるよ
 東京の「おじ」、大倉創(おおくらはじめ)は、正確には、結衣の父親のいとこにあたる。

 おじの家は、都心に近い、高級住宅街にある。

 小学校の低学年のときに、一度遊びに行ったことがあるが、「広い家だった」ということぐらいしか結衣の記憶には残っていない。

 大倉家には、子供が二人いた。

 今年大学三年生の姉の緑(みどり)と、高校二年生の弟の洸貴(こうき)は、結衣の『はとこ』だった。

 昔は、お正月や夏休みなどに、神奈川の祖父母の家で、よく会ったものだった。

 ひとりっこの結衣は、二人と遊ぶことが楽しみで仕方がなかった。

 でも。

 結衣が小学校の高学年になる頃には、クラブ活動や習い事が忙しくなり、自然と祖父母の家に行く回数が減っていた。

 それは洸貴たちも同じだったようで、なかなかタイミングが合わず、遊ぶ機会もなくなってしまった。

 よく考えてみれば、おじ家族と結衣が、ちゃんと顔を合わせるのは、約6年ぶりになる。




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