AKANE
「ユリ、ここは・・・?」
「ボウレドの街医者、フレゴリーの診療所です」
 ユリウスは一呼吸置いてから言った。
 フェルデンは驚いた表情を浮かべて天井からユリウスへと視線を泳がせた。
「ボウレドだと?」
 こくりと頷くと、ユリウスはフェルデンに頭を下げた。
「貴方の指示に従わず、すみませんでした。でも、あのままメトーリアに向かっていたら、貴方は死んでいたかもしれない。おれは部下である以前に貴方の友でもあります。貴方を助けるという義務がある、わかってください。」
 フェルデンは、解顔して目を閉じた。
 サンタシを出立する前、信頼の置ける部下を一人供として連れて行けと、といったディートハルトの言葉の意図がやっと今になってわかった気がした。今ここにユリウスが供として居てくれることに、心から感謝した。
「いや、おれこそお前に謝らなければ。おれは正気を失っていた・・・。ありがとう」
 怒りを買うとばかり思っていたユリウスだったが、想いの他返ってきた謝罪と感謝の言葉に困惑し、照れた笑みを浮かべた。
「まだ二、三日は安静にしておいてください。本当ならまだ一週間はベッドに縛り付けておきたい程だとフレゴリーは言ってましたが、急ぎの用があると話したら、熱が下がれば特別に許すと言ってくれました」
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