AKANE
そしてそれは昨晩の出来事で確信へと変わった。暗闇の中でクリストフがフェルデンに向けて言った、
“貴方は悲しみのあまり、あまりに盲目になりすぎている。もっと心の目で物事を見てみてください。そうすれば…真実が自ずと見えてくる筈です”
という言葉は、朱音の境遇を全て理解していることに他ならない。
 クリストフはじっと朱音の黒曜石の瞳を見つめた。
「さて、どうでしょうか」
 彫りの深い濃げ茶の目は、別段焦った様子も無く普段同様にほんの少しの笑みさえ含んでいる。
「けれど、この旅はアカネさんが自分探しの為に始めた旅な筈です。例えわたしが全てを知っていたにせよ、最終的に答えを出すのは貴女です。わたしにそれを決める権利はどこにもありません」
 なぜこうも、クリストフは知らない振りをし続けようとしているのか、朱音にはわからなかった。
 クリストフの言おうとしている意味を、難しい顔で考え込む朱音に、クリストフはあっけらかんとした声で言った。
「そんなことより! そろそろ彼がやって来る頃ですよ」
 誰が、と朱音が聞き返そうとした瞬間、部屋の扉のすぐ後ろでぎゃっという悲鳴が聞こえてきた。
(???)
 不審に思って恐る恐る扉を開くと、廊下一面に果物の入った袋をぶちまけてひっくり返っているボリスの姿がそこにあった。
「あれ、ボリス?」
 くすくすと笑いながら、クリストフが朱音の後ろから声を掛けた。
「わたしが彼にちょいとお遣いを頼んだんですよ。そう、安全性の高い食料の調達と、それから旅に必要な道具、それから・・・」
 まだまだ続くだろうクリストフの羅列していく物の多さに、朱音は笑いを堪(こら)えることができなかった。
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