AKANE
二人はリストアーニャの北の検問所へとやって来た。
検問所前には国のお役人がわらわらと集まり、何か忙しなく話している。どうも、国境を出たアストラの領土内に突風で飛ばされた物達が散らばっているようで、簡単には往来できないでいるらしかった。
その他にも、どうもその噂を聞きつけた一般人も多く群がっていて、とてもじゃないが検問所を通ることなどできそうにない。
「テントの中にはうちの子もいたんですよ! 中の者は皆無事なんですか!?」
役人達が怖い顔で一般人に返答している。
「ここは一般人の来るところではない。下がりなさい! 」
エフは道中で買った肉をかじりながら、うんざりしたように言った。
「えらいごった返してるな。こりゃ当分は通れそうにねぇぞ」
焦りのあるルイは、このどうしようもない状況に苛立ちを隠せない。
「号外! 号外!!」
すぐ近くの石橋の上で、若い男が束になった紙を配り始めた。
「おい、一枚くれ」
ひょいっと横からエフが男の横から紙をくすねる。男はそれに気にした様子も無く、そこら中の人という人にばら撒いている。
「さっき入ったばかりの大ニュースだ! 号外!! 号外!!」
エフが紙に視線を落とすと目を丸くした。
「おい・・・、これ見てみろ」
検問所に近づけないことで苛立っていたルイは、手渡された紙をいい加減に受け取って不機嫌そうに目を通した。
「嘘だ・・・!!」
とんでも無い見出しに、ルイは必死に活字を目で追う。心臓が早鐘のように打ち始めている。
“ゴーディア、サンタシ、戦再開!!”
十年前の条約以来、停戦中だった二国間だったが、とうとう恐れていたことが起こってしまったのだ。