AKANE

“ゴーディア側がサンタシに宣戦布告を申し立て、メトーリアに停泊中のサンタシの商船を砲撃した後、乗組員を見せしめに殺害。サンタシの賢王ヴィクトル・フォン・ヴォルティーユはひどく憤慨し、ゴーディアの挑発に受けて立った。ゴーディアからは既に軍の進出の動きが確認されており、サンタシ側でも近くそれに対抗する処置がとられるであろう。
 十年前にヴィクトル王とルシファー王のもと結ばれた停戦条約はゴーディアの手酷い裏切りにより儚くも破られてしまった。各国からのゴーディアに対する批判の色は強く、新国王クロウへの批判の声も多くあがっている。これも全て、新国王クロウの幼さゆえの過ちなのだろうか。だとすれば、誰かが彼の間違いを正してやらねばならないだろう。いや、誰が彼を止めることができるであろうか。 ”
 
 くしゃりと紙を握り潰すと、ルイはぎりぎりと唇を噛んだ。
(あいつだ・・・! ヘロルドに嵌められたんだ・・・!)
 クロウが魔城を留守にしている間、あの男が好き勝手に事を運んでいたらしいことが、手にとるように分かる。クロウを悪者にすることで、自らが王の座を手に入れやすくしているに違いない。
「しかし、このゴーディアの新国王クロウってのは、相当の我儘坊ちゃんらしいな。国を巻き込むなんざ恐れ入るぜ」
 そう言ったエフに、ルイは掴みかかった。
「違う! 陛下はそんな方じゃないっ! 陛下は、陛下は・・・、優しくて思いやりのある人で・・・」
 びっくりしたようにエフがルイの掴み掛かった手を握る。
(陛下にきっと何かあったに違いない・・・! 陛下を助けなきゃ!!)

< 242 / 584 >

この作品をシェア

pagetop