AKANE
 フィルマンは男の怪我に対処してやれる自信が無かった。知識はあったものの、このときの彼はまだ、ひどく経験が浅かったのだ。
「は、はい・・・」
 男の左腿は血液でぐっしょりと染み渡り、地面にも血溜まりができている。
 持っていた医療キットの中から鋏を取り出すと、フィルマンは震える手で、男の傷周りの衣服を切り裂いていく。
「ああ・・・、これは・・・」
 ひどい出血だった。剣での切り傷であったが、今尚血はどくどくと溢れ出している。傷は動脈にまで達しているようだっだ。
「おれは助からないのか?」
 男は青い顔で言った。フィルマンは、無言のまま腿の際をぎゅっときつく紐で縛り、止血を図る。しかし、一向に血は止まらない。
 フィルマンは男を助けられないと思った。
「坊や、代わろう」
 突然背後から別の男の声が降ってきたと思うと、男はフィルマンを押し退けるようにして窪みに飛び込んできた。
「動脈がいっちまったかな・・・」
 傷を見るなり、男はフィルマンに指示を始めた。
「坊や。ちょっとこっち来て、ここんとこを人差し指で押さえててくんないか」
 何者かわからぬ男の指示に、フィルマンは従順に従い、男の指示した通りにその部位を押さえる。
「出血が・・・」
 明らかに出血量が少なくなった傷に驚き、フィルマンは男の顔を見上げた。
 驚いたことに、その中年の男はゴーディアの医療部隊の制服を見につけていた。
「ま、一時的なもんだ。ちょっと痛むぞ」
 そう言った途端、怪我を負った男が悲鳴を上げた。
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