AKANE
「アカネは・・・、おれとの再会を望んでいないのかもしれない・・・。彼女はおれを恨んでいるのかもしれいないと思ってな。もしおれがアカネに会いたいと行動することが、彼女にとっては迷惑でしか無いとしたら・・・」
 フェルデンが全てを話し終える前に、ユリウスが言葉を挟んだ。
「殿下、アカネさんはきっと今でも殿下に会いたいと願っていると思います。だって、そうでなければあんなに近くまで戻って来たりしないと思いません? きっと、殿下に直接会えないような特別な理由があったんですよ」
 ユリウスの読みは正しかった。けれど、まだ二人は朱音とクロウ王の関わりについて気が付いてはいない。

 苦笑いをしたフェルデンに、ユリウスが励ますような顔で言った。
「殿下、何があっても、この戦を勝ち取りましょう・・・! そして、サンタシを守り、その時こそ必ずアカネさんを捜し出しましょう!!」
 こくりと頷き、フェルデンはユリウスの小柄な背をぽんと叩いた。それは、フェルンデンの精一杯の感謝を込めた返事であった。
 すぐにでも彼女を見つけ出し、連れ帰りたい思いは変わらないままだったが、その思いは今はそっと胸の中に仕舞っておくことにした。自分の我儘で部下や仲間達の命を危険に晒すことはできはしない。
「ユリ、騎士団を城門前に集結させろ。ディアーゼ港に向け出立する」
 


< 293 / 584 >

この作品をシェア

pagetop