AKANE


「はあはあはあはあ・・・」 
 相手が子どもだと思って油断していたこともあり、案外簡単に城内に入り込むことができたことに、朱音は驚いていた。
 いや、よく考えると以前この城にいたときに比べると、兵の数が格段に少ないようにも思える。いつも騎士達の訓練の声が堪えない中庭も、今日はしんと静まり返っている。
(まさか・・・)
 朱音は頭を振った。まだこんなところで立ち止まる訳にはいかない。
(早くヴィクトル陛下にお会いしないと・・・! 全てを話して、この戦争を止めて貰わなきゃ・・・!)
 朱音は身を潜めていた馬小屋の影からゆっくりと立ち上がると、呼吸を整えて駆け出した。


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