AKANE
「そうだ。ここは、君が創り出した作り物の世界。まだ君は完全には消えてしまった訳じゃない。君が消えてしまうその時まで、クロウの身体は二人のものだ」
またひどい頭痛に苛まれ、朱音は霞む目で少年の黒曜石の瞳を見つめ続けた。
(何を言ってるのか分かんないけど・・・、わたし、この子とどこかで会ったことがある・・・)
「思い出せないのは気のせいだ。ちゃんと君は覚えている。僕のことも、アザエルやルイのことも。そして、フェルデン・フォン・ヴォルティーユのことも・・・」
ぐるぐると回る視界で、朱音は小さく悲鳴をあげた。
『アカネ、もどって来い』
遠くで優しく懐かしい声がした。
そう、あの優しい声を朱音はよく知っている・・・。
高鳴る鼓動。
振り向くと、金の髪の青年が柔らかに微笑んでいた。その目は、その目は透けるようなブラウンで、蜂蜜の色によく似ていた。
「フェルデン・・・」
気付けば、朱音はそう口にしていた。
(そうだ・・・、ここは元の世界なんかじゃない・・・! わたしはまだレイシアにいるんだ。ここは違う・・・! 彼の居る世界じゃない!)
そう思った途端、バタンとトイレの入り口が開き、彼氏を引っ張ってきた愛美の姿が視界に入って来る。
しかし、朱音の身体はみるみると透け始めていた。
「朱音!?」
消えかかった友人を見て、愛美が何か叫んでいた。
(ごめんね、愛美・・・)
偽の世界だと分かってはいても、こうして再び母や真咲、そして愛美に出会えたことに、朱音はただ感謝した。そして、できることなら、父にも一目会いたかったなとも思った。
またひどい頭痛に苛まれ、朱音は霞む目で少年の黒曜石の瞳を見つめ続けた。
(何を言ってるのか分かんないけど・・・、わたし、この子とどこかで会ったことがある・・・)
「思い出せないのは気のせいだ。ちゃんと君は覚えている。僕のことも、アザエルやルイのことも。そして、フェルデン・フォン・ヴォルティーユのことも・・・」
ぐるぐると回る視界で、朱音は小さく悲鳴をあげた。
『アカネ、もどって来い』
遠くで優しく懐かしい声がした。
そう、あの優しい声を朱音はよく知っている・・・。
高鳴る鼓動。
振り向くと、金の髪の青年が柔らかに微笑んでいた。その目は、その目は透けるようなブラウンで、蜂蜜の色によく似ていた。
「フェルデン・・・」
気付けば、朱音はそう口にしていた。
(そうだ・・・、ここは元の世界なんかじゃない・・・! わたしはまだレイシアにいるんだ。ここは違う・・・! 彼の居る世界じゃない!)
そう思った途端、バタンとトイレの入り口が開き、彼氏を引っ張ってきた愛美の姿が視界に入って来る。
しかし、朱音の身体はみるみると透け始めていた。
「朱音!?」
消えかかった友人を見て、愛美が何か叫んでいた。
(ごめんね、愛美・・・)
偽の世界だと分かってはいても、こうして再び母や真咲、そして愛美に出会えたことに、朱音はただ感謝した。そして、できることなら、父にも一目会いたかったなとも思った。