AKANE


 
 突然ぱっと開けた視界に、朱音は思わず目を細めた。いつの間にか夜が明け明るい太陽が差し込んでいる。浮遊感とともに、あまり座り心地のよくない羽毛を尻の下に感じた。
「わっ、わっ!? どうなってんの、これ!?」
 自分が地上から遙かに離れた空を飛んでいることに気付き、驚いて落っこちそうになったところを、がしりと後ろから捕まえられた。
「陛下、急にどうしたんです」
 振り向くと、盲目の槍使い、ライシェル・ギーがいた。
「えっ、ラ、ライシェルさん・・・!? 」
 どういう成り行きでこうなったのかは想像もつかないが、とにかく、今は巨大な鳥の背に跨って空を飛んでいることだけは確かだ。
 急に別人のように纏っていた空気を変えてしまった少年王に気付き、ライシェルはここで初めて少年王の中に存在する、二つの人格に気付き始めた。
「陛下、陛下がこのゾーンを手懐けてくださったお蔭で、銀獅子の足よりもずっと早く追いつくことができたようですよ」
 どうして目の見えない彼が、遙か下にいる騎士団の姿を知ることができたのかは不可思議な事象だったが、朱音は上空から、黒の騎士団とサンタシ騎士団の姿を確かめることができた。
 戦闘をかけている白いマントの騎士はきっと、フェルデンに違いない、と朱音は思った。
 クロウがくれた僅かだけれど、大切な時間。
 朱音はぎゅっと胸元に隠したペンダントを服ごしに握り締めた。
(あともう少し・・・、あともう少しだけ・・・!)
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