AKANE

14話 帰ってきた紳士

 
 白銀の毛の獅子の群れが王都を一望できる崖上に佇んでいた。
 美しく風に靡き、さらさらと毛が揺れる度、獅子たちははあはあと荒い息を立てながらその凛々しく利口そうな目を細めてじっと風にまかせていた。その背には、それぞれ灰の軍服に身を包む騎士達と、白い軍服に身を包む騎士達が跨っている。
「これは一体・・・」
 ディートハルトは逃げ惑う人々の悲鳴や、燃え盛る王都の街を見下ろし、愕然とした。
「くそう、間に合わなかったってことか・・・!」
 くやしそうなアレクシの声に、サンタシの騎士達は皆込み上げてくる怒りと悲しみの入り混じった感情で、誰しも涙を堪えた。
 美しかった王都は今や見る影もない。しきりに上がる黒い煙に、炎。あちこちに不気味な焦げた穴が地面に口を開けている。
「いや、まだ悲しむには早い。両の目を凝らしてよく見てみろ。まだ諦めずに闘う者がいるということを」
 ライシェルは何も映すことのできない琥珀の瞳で、じっと王都を見つめ、何かを感じ取っているようであった。
「あれは・・・」
 最初に声を上げたのは黒の騎士団唯一の女騎士、タリアであった。
 彼女は確かに街の中で懸命に闘う者の姿を認めた。
 この距離でははっきりとは見えないが、赤い炎の塊のようなもので王都を破壊していく何者かを妨害しようとする何者かが街の中にいるようだ。
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