AKANE
 城は見たところまだ目立って外傷は無い。王都の惨状から想像するに、白亜城は敵に占拠されている可能性が高い。
「先に行かれたフェルデン殿下です、きっと」
「恐らく、クロウ陛下もどこかにおられる筈」
 サンタシの騎士達とゴーディアの騎士達は、互いに顔を見合わせた。国は違え、今、二つの国と二つの種族の目的は一つに一致していた。
「急げ! お二人の援護に参らねばなるまい!!」
 ディートハルトは太く逞しい左の腕の拳を振り上げた。
 銀獅子の背に跨った騎士達は勢いよく崖を駆け下りた。一つの目的の為に。


 朱音は背中の痛みに堪えながら、駆けた。
 しかし、身軽に建物の屋根を飛び移りながら街を破壊していくファウストには、地上からではとても追いつくことはできない。
(どうしよう、彼に追いつけない・・・!)
 崩れ落ちてくる障害物を避けながらの追跡は、かなり応えた。かと言って、ここにゾーンを呼び寄せるには抵抗がある。ゾーンは暑さを嫌うことも一理あったが、彼を呼べば、間違いなく巨大な彼がファウストの攻撃の的になることは目に見えていた。これ以上、彼をこの闘いに巻き込むことなどできはしない。
「全部わたしのせいなんだね・・・。ルイやアザエルはわたしがお城を空けることを止めてたのに、わたしは自分勝手にお城を抜け出してきた・・・。わたしがそんなことしなかったら、きっとこの戦争は起こることはなかったのに・・・・」
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