AKANE
 朱音はその反面自らに重い罪の意識を抱えていた。
 愛するが故に許すことのできない自分自身の行い。自分可愛さとフェルデンを守るという言い訳を理由に、自分勝手にも魔城を離れたこと。そのせいで望まぬ戦が始まり、ルイのみならず、そしてフェルデンの愛する実の兄ヴィクトル王を死へと追いやってしまった。そして今やこのサンタシ国さえ危機に瀕している。守るどころか、フェルデンを苦しめることばかり繰り返してきた自分をどうしても許すことができないのだ。そして、あの夜、肩に大怪我を負ったフェルデンを見捨ててゴーディアへ去ってしまったことについても、まだ罪の清算はできていない。
(だけどきっと、貴方だけは守ってみせるから・・・!)
 朱音はきっと白く広がる雲の先を睨んだ。

「いたぞ!」
 フェルデンの声と同時に、赤い竜の尾っぽが雲の合間に覗き、スキュラは勢いよくそれを追う。
 雲を突っ切ると、一面の青空が広がり、太陽がもの凄く近く感じる。
 追いつかれてしまったことに舌打ちをしたファウストは、片手で乱雑な火弾を浴びせかけてくる。しかし、すばしっこいスキュラはその攻撃を悠々とかわしてゆく。スピードから言えば、あの赤い飛竜よりもスキュラが上のようだ。
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