AKANE
灰色のローブに霞がかった茶の髪。生意気そうな少年が馬の背に跨ったままじっとこちらを見つめている。
「ロラン、来てくれたのか」
怪我を負った飛竜をも守るように、ロランの完璧な結界がマブのいる外界から完全にシャットアウトされていた。ようやく訪れた平穏。恐ろしい数に膨れ上がったマブはその結界を覆い隠すように群がっている。
「ヴィクトル陛下がお亡くなりになったことを伺いました」
僅かに目を伏せ、変声期を迎えていない声でロランが言った。
「ああ・・・。君が仕えていたのは兄上だ。もうサンタシに仕える必要が無いのに、君は手を貸してくれると?」
ロランは、兄ヴィクトルがいつしかどこやらで拾ってきた半魔族の少年であった。
無愛想で且つ出身以外の全てが謎のこの少年を、どういう訳かヴィクトルは術師として自らの側に置いてきたのだ。その理由と真相は唯一人の弟であるフェルデンにも明かされていない。
「いいえ、僕はサンタシの魔術師です。ヴィクトル陛下に僕は返し切れない程のご恩を戴いてきました。ここにサンタシという国が在る限り、僕はサンタシの術師であり続けます」
こくりと頷き、フェルデンはロランのどこまでも真っ直ぐな瞳を見つめた。
この場でこれ程心強い仲間はいないだろう。
「ときに、フェルデン陛下。なぜ外のあの気味の悪い生き物が増え続けているかご存知ですか?」
ロランの問いに、ユリウスとフェルデンが顔を見合わせた。
「ロラン、来てくれたのか」
怪我を負った飛竜をも守るように、ロランの完璧な結界がマブのいる外界から完全にシャットアウトされていた。ようやく訪れた平穏。恐ろしい数に膨れ上がったマブはその結界を覆い隠すように群がっている。
「ヴィクトル陛下がお亡くなりになったことを伺いました」
僅かに目を伏せ、変声期を迎えていない声でロランが言った。
「ああ・・・。君が仕えていたのは兄上だ。もうサンタシに仕える必要が無いのに、君は手を貸してくれると?」
ロランは、兄ヴィクトルがいつしかどこやらで拾ってきた半魔族の少年であった。
無愛想で且つ出身以外の全てが謎のこの少年を、どういう訳かヴィクトルは術師として自らの側に置いてきたのだ。その理由と真相は唯一人の弟であるフェルデンにも明かされていない。
「いいえ、僕はサンタシの魔術師です。ヴィクトル陛下に僕は返し切れない程のご恩を戴いてきました。ここにサンタシという国が在る限り、僕はサンタシの術師であり続けます」
こくりと頷き、フェルデンはロランのどこまでも真っ直ぐな瞳を見つめた。
この場でこれ程心強い仲間はいないだろう。
「ときに、フェルデン陛下。なぜ外のあの気味の悪い生き物が増え続けているかご存知ですか?」
ロランの問いに、ユリウスとフェルデンが顔を見合わせた。