AKANE
 アザエルか、ユリウスか、ディートハルトか。或いは騎士の誰かか。あの城の中で蛻(もぬけ)になったブラントミュラーの肉体を見つけ、まさに今、その命を絶とうとうしているのだ。
「あああああ・・・、や・・・めて・・・」
 ブラントミュラーの叫びを最期に、ルシファーの身体はぴくりとも動かなくなった。
「終わったみたいだな」
 クロウはふうと脱力してその場に座り込んだ。
「おい、クロウ。大丈夫か?」
「ああ、死ぬ程ではないよ。しばらくじっとしておけば回復する」
 酷い有様な父の亡骸に、クロウは申し訳ない気持ちでがっくりと肩を落とす。
「大丈夫だ、クロウ。フレゴリーなら、元の状態と言えずともある程度見れるようにしてくれるだろ」
 そうだね、とクロウは頷いた。
 やっと訪れた静寂。平和の足音。

「そう言えばフェルデン。どうやって、あれだけのマブを始末したの?」
 フェルデンは少年のように笑い答えた。
「君の部下には腕のいい魔笛使いがいるだろ? 全部彼だ」
 ああ、とクロウは笑った。
 ライシェル・ギーの魔笛でマブを操作し自滅させるという考えは、後にこのフェルデンが考えついたということが分かる。そして、それを手助けしたのが、あのアザエルだということも・・・。
「遅くなったが、ようこそサンタシへ。ゴーディアの新国王、クロウ陛下」 
 長く酷い闘いが終わった。
 これからは、新しい時代が始まる。



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