AKANE
最終章
1話 新たなる時代へ
「柑橘類とハーブのミックスティーです、陛下」
かちゃりとデスクの上に置かれたティーカップから、甘酸っぱい香りが漂う。
「ああ、エメ、ありがとう」
フェルデンは山積みになった書類から目を離し、そばかすの侍女に言った。
「陛下、ひどいお顔ですわ。少しお休みになられてはいかがですか?」
エメは心配そうに溢す。
「ああ・・・、だが、まだ王都の復興の目処がついていないからな・・・」
フェルデンはふと部屋の窓から外を見やる。
この一ヶ月で、王都の再建は驚く程のスピードで行われていた。この分だと、あと数ヶ月もしないうちに、一時避難していた民の多くも王都へと戻ってこられるだろう。あちこちで人々がせわしなく働いている。王都が完全に復興した暁には、新しく生まれ変わった王都の名前を変えようと、フェルデンは心に決めていた。
ちょうど一ヶ月前、この土地には王都が跡形も無く消え去っていた。
地は荒れ、多くのザルティスの死体が無数に散らばり、とても目を向けられるものではなかった。
あの日、フェルデンはクロウとルシファーの人間離れした闘いを目にした。自分達人間は、こんなにも恐ろしい相手と長い間戦をしてきたのかと呆れ返ったのが本当のところだ。
「あなたは、確か、ロジャー・・・」