AKANE

2話 もう一つの決意


「よく来たな、クロウ」
 スキュラの背から降り立った少年王の手を取り、フェルデンはがしりと肩を抱いた。
「久しぶりだね、フェルデン」
 フェルデンは、クロウが船では無く飛竜を使ってやって来たことに少々驚いていた。
「ああ、君のおかげで王都もこの通りだ。既に多くの場所で人が賑わい、機能し始めている。まだまだ整備の必要なところも多いけれど」
 白亜城の敷地内に降り立った二頭の黒と赤の飛竜は、ご機嫌な様子で爬虫類の眼をきょろきょろとさせている。
「そのようだね。正直、これ程早く復興できるとは予想していなかった」
 クロウは透けるような白い頬を嬉しげに緩めた。これが魔の国王と謳われていた者とは今では到底考えられない。
「クロウ、長旅疲れただろう。部屋を用意させている。少し休むといい」
 クロウを城の中へ招くと、フェルデンは小声で訊ねた。
「ところで、なぜ今日は君の側近はいない?」
 赤い飛竜の背から降りた付き人は、あの碧髪碧眼の氷の男アザエルではなく、あの盲目の槍遣いライシェル・ギーであった。
「彼は主宰を務めることになった。僕が魔城を留守にしている間は彼が全てを取り仕切っている」
「へえ、彼が主宰を?」
 フェルデンはゴーディア国内でも確実に大きな変革が起き始めたことを改めて感じた。
「そうだ、クロウ。俺は君に謝らねばならない」
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