AKANE
 二人の後には、ぞろぞろと近衛兵が列をなしてついている。
 今日、サンタシ国内でも、ゴーディアの国王が訪国するという噂で持ち切りであった。
「へ?」
 きょとんと黒曜石の瞳でクロウはフェルデンを見返した。
「君のお父上の葬儀のことだ・・・。あんなことがあった後にも関わらず、参列できずにすまない・・・」
 特別な来客用の部屋の前までやって来ると、フェルデンはぴたりとそこで足を止めた。
「そんなことを気にしていたの? 貴方の国はそれどころじゃ無かったじゃないか。その気持ちだけで十分だよ」
 この日ばかりはエメにもユリウスにも半強制的に王服を身につけさせられているフェルデンは、いつになく国王らしくクロウの眼に映った。
 すっかり存在を忘れかけていたが、ライシェルは静かに二人から適切な距離をとってクロウの近くに控えている。
「そう言って貰えると気が楽になったよ」
 フェルデンは侍女に客間の両開きの扉を開けさせた。
「この部屋は君の為に用意させたものだ。今晩はゆっくり休んでくれ。何か足りないものがあれば、鈴を鳴らして侍女を呼んでくれ。何でも用意するよう話しておく」
 クロウは困ったように微笑んだ。
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