AKANE
「すごい人だかりだね」
 クロウは作った笑顔を崩しはしないが、本音を溢す。
「ああ、予想はしていたが、これ程までとはな・・・」
 フェルデンもそう返した。
 それもその筈、今日はただの王都復興記念というだけではないのだから。
 王都の中心に立てられた、平和の願いを込めたモダンな塔の前で二人の乗った馬車が停止する。
 塔のてっぺんには、黄金に輝く鐘が太陽の光に反射し、美しく輝きを放っている。塔を取り囲むように建設された広場には、真っ赤な絨毯が敷かれ、塔の入り口まで続いていた。
 二人は塔の最上階から王都を見下ろしていた。塔の下は見上げる人々で埋め尽くされ、恐ろしい程の熱気を放っている。皆、新たなる若き王の言葉を心待ちにしているのだ。
 フェルデンは出来得る限りの声を張り上げた。
「我国は心無き悪しき者の手により、望まぬ戦を強いられ、王都を含め多くの民の犠牲を払った。先王であるヴィクトル陛下もそのお一人であられる。しかし、大きな痛手を負ったのは我サンタシ国だけではない。長き間我国と敵対していたゴーディア国もその犠牲となった」
 民衆の間から、ざわざわとどよめきが起こり始める。
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